医局行事・学会報告
Lupus2019報告
平成23年入局・免疫班 宮脇 義亜
サンフランシスコで開催されたLupus2019(13th International Lupus Conference)に参加してきました。佐田先生とサンフランシスコ国際空港で合流し、バートという地下鉄で30分ほどすると市街中心部Powell駅へ。いつのまにか降りる駅で気づかずに、そのまま乗り過ごして2駅先のEmbarcardero(エンバカルデロ)駅で下車。ガイドブックに載っていたホグ・アイランド・オイスター・カンパニーというオイスターバーが近いので、名物のクラムチャウダーと、生がきを頂くことに。大ぶりの殻付きアサリがゴロゴロはいっており、あっさりとした味で美味い!
Powell駅まで戻って重たい荷物を転がしながら地上にでると、外気温は16度ほどで体感的にちょうど良い。学会会場は、ユニオンスクエアという公園の近くで、このあたりには有名ブランドのショップやデパート、ホテルが密集しておりショッピング目的の観光客が集まる場所でした。無事にポスターを張り終えたところで、既に貼ってある内容を見て回ると、QRコードを中心に据えたデザイン(下図)のポスターがありました。JCRでは「ポスターへのQRコード等の掲載はお控えください」と記載されており、特に記載のない学会では、詳細をポスターで伝えきれないと思った時はこういう方法もアリ、ということでしょう。でもポスターツアーがある時にも向かないかもしれません。
現在、自分のテーマとして取り組んでいる「Patient Reported Outcome」や「Lupus Low Disease Activity State(LLDAS)」の研究もいくつかあり、PROMISあるいはLupusQOLなどの指標をアウトカムとした研究が中心で、中には曝露要因がModifiableではない研究もありましたが、臨床重要差(MID)に言及したdiscussionをしている研究ではとても刺激を受けました。一方、LLDASの研究は中国13施設1800人を3年間追跡したコホート研究で、追跡中1回でもLLDASを達成できた者は78%、LLDAS期間が持続するほどフレアの発生やDamage蓄積ペースの低下と関連していたと報告されており、LLDASの縦断的データが増えてきたと感じます。最新の治療に関するセッションでは、ウステキヌマブ(ステラーラ)、IFNα-kinoid、バリシチニブ(オルミエント)についての講演がありました。SLE Responder Index(SRI)を主要評価項目に据えて1-2年追跡した試験で、いずれの薬剤も主要評価ではあらかじめ想定していた群間差を有意差をもって検出するに至っていない、という結果でした。どの薬も総じて関節炎、皮膚症状など末端の症状の改善は期待できそうでしたが、補体やDNA抗体といった免疫異常の改善は見込めないかもしれないという印象です。SRIは「SLEDAIの改善かつ「PGAとBILAGで悪化なし」という指標で、これの達成が示唆している臨床的意義は不明瞭で、そもそもふさわしくないのかもしれません(他にこれという指標がないので仕方ないのですが)。
ヒッピー発祥の地サンフランシスコは、ユニオンスクエア周辺といえども、路上生活が長そうな者や、大声で笑ったり叫んだりしているおかしな白人達をちょくちょく見かけました。学会からホテルへ戻る道中で、仕事をくれと言う背の高い黒人に絡まれるという出来事もあり、ちょっと怖い思いもしました。無視して歩いていると結構長いこと何か言いながら後を付いてくるので、止まらないと後ろから撃たれるんじゃないか、という恐怖を味わいましたが、振り向かずにいるといつの間にか彼はいなくなっていて事なきを得ました。アメリカの中で観光に行く場所としてサンフランシスコの街は、常に上位に入るらしく、ゴールデンゲートブリッジ、市内の路面電車が特に有名とのことです。路面電車に乗りに来ましたと観光客が言うほど有名というので、佐田先生と2人で一番前のステップに陣取って乗車してみました。サンフランシスコは急な傾斜の上りと下りの道が多く結構なスピードでシートベルトは当然なく自らの手の力だけでしがみついて乗ります。路上駐車している車スレスレに、ちょっと伸ばせば身体が当たる距離で通過するので、確かにここでしか味わえない体験でした。ホテルは佐田先生と同室だったので言わずもがなですが、期間中、沢山飲んで、多くを学ぶことができ、この貴重な機会をご提案くださった佐田先生に感謝を述べたいと思います。次回のLupus2021はイタリアのベニスで開催されますが、さらに発展的な内容で挑戦すべく決意を新たにしております。